地区大会は4回以降、本大会は3回以降、35歳以上のメンバーだけで戦わなければならない。
ピッチャーは最初から30歳以上で、1人2イニング以内と決められている。
試合は1時間半の時間制で、
時間内に全員の夢を叶えるためにはすべての選手を交代させながら勝利を目指さなくてはならない。

マスターズ甲子園は、究極の全員野球だ。


元高校球児たちのフィールド・オブ・ドリームス

「マスターズ甲子園って、甲子園に出た選手だけの大会ですか?」

2004年、第1回大会を始動した当時は、この質問が神戸大学発達科学部内の研究室に置いた大会事務局に対しかなり多く寄せられた。「いいえ、高校時代の甲子園出場・非出場は関係ありませんよ。甲子園に出られなかった人達も、もう一度甲子園を目指すための大会です。」と説明すると、「本当ですか!?」という弾んだ声の後、次の質問が勢い良く返ってきた。「どうしたら出られますか。」

全国には推計200万人の元高校球児がいる。しかしそのほとんどは、高校野球部時代に、憧れの地を踏めなかった甲子園非出場者である。マスターズ甲子園は、出身校別に同窓会チームを結成し、全員共通の憧れであり、野球の原点でもあった甲子園球場を、再度目指そうとする大会である。いわば、諦めの悪いおじさんたちの甲子園大会と言ってもいい。その諦めの悪いおじさんたちは、年々増え続けている。2004年の第1回大会から2013年の第10回大会まで、地方予選リーグには4県から34都道府県・約489校に拡大し、現在は約2万人の元高校球児達が遅咲きの甲子園デビューを目指し各地の予選大会を闘っている。

甲子園本大会に出場を果たした選手達は皆、夢見続けてきたグラウンドでこれまでの想いを爆発させる。開会式での入場行進中に感極まって涙ぐむ選手たち、シートノックでかつてのチームメイトからの返球を受けながら泣き出してしまったキャッチャー、甲子園のマウンドを噛みしめながら渾身のストレートを投げ込むピッチャー、気持ちが完全にスタンドに向いている全打席フルスイングのバッター、甲子園でのゲッツーを決め歓喜する内野手陣、甲子園の芝生で念願のスライディングキャッチをし、ベンチ前で頭を叩かれながら祝福される外野手、ユニフォームを甲子園の土で真っ黒にしたいと猛烈にヘッドスライディングするランナー、相手の選手よりも仲間にヤジを飛ばすベンチ内のチームメイト、そして、選手たちの一投一打に目を細める元監督と元女子マネージャー、世代を超えて野球部の仲間が集まり、世代を超えて同じ目標であった、聖地甲子園で、最高の同窓会が繰り広げられる。

この夢舞台は、過去の選手自身の高校野球への真剣な想いと、その後の夢のスタミナの力が作り上げた大会である。人生再度のプレーボールを追い続けてきたあきらめの悪いおじさんたち、元球児たちの夢と挑戦は続く。

長ヶ原誠

マスターズ甲子園実行委員長
神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。鹿児島県立鶴丸高校野球部出身の元高校球児。


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